藝人て、単純なもんでしょうか。何に対して単純かにもよりますけど。
藝に対しては、単純だけで済まないもんやと思うんです。この11年半の僕自身を見るに。ただ僕自身の問題かもしれませんが。
そんなんではなくて、例えば単純にどこでどんな人の前でもやることと言うのは落語であることに変わりはない。常に楽しく、お客様に伝わるものをやり続けたい、と思うわけです。その単純な思いを叶えるためにする努力は、全然単純には報われないのがまた凄いとも思うのです。
今、繁昌亭の昼席に一週間出演させていただいてます。通しで出演は、たぶん今回が初めてです。トリの福笑師匠の前で喋っています。僕の前には文福師匠。出演者の中で下から2番目の僕が、後ろから2番目に出していただいています。メチャクチャ勉強なります。でも、お金をいただいているという事は、勉強だけではだめです。
こないだ、その最中にたぶん初めて、夜席のトリをつとめました。季節と言う事もあり、「遊山船」をやらせていただきました。トリの責任が、舞台の内も外もあるのだと感じ、舞台で落語やっている時が一番幸せやとつくづく思いました。そして、ご来場下さったお客様には本当に感謝で、高座に上がってからも暫く感謝の気持ちがおさまらずにいました。
当日、浴衣をある方から頂戴しました。
それは、僕が弟子入り志願で初めてうちの師匠に会った14年前の、平成紅梅亭の楽屋で師匠が着ていたのと同じ柄の浴衣。見た瞬間 涙出そうになりました。ありがたすぎて、しばらく着られません(笑)。
この日に、あの時の師匠の浴衣に再会するという事も、「お客様が来て下さる」という事が、如何に感謝すべきことか、そういう原点を師匠が教えて下さったような気になる、一日でした。
浴衣を見るたび、余韻に浸る吉坊です。
PR