噺家になってからの時間で、多いのはどんな時間だろうと思うと、ひとつは「聞く」時間ではないかと思うのです。「聴く」も「訊く」も含めて。
師匠の噺を舞台袖で聴き、楽屋で師匠のしゃべってはるのに耳をそばだて、稽古の時はもちろん、ずっと何かを聞いているといえます。
「聞き上手は話し上手」てなことをよく言われます。そもそも聞き上手というのは、うまい受け答えをして自分が聞きたいと思っていることを相手に十分話させることだそうです。そう言うと、確かにただ話を聞いてるだけでは相手は面白くないでしょうし、そこの受け答えで話は広がりもしますし、尻すぼみにもなります。
『論座』は、多方面の方々から貴重なお話をうかがう絶好の機会を与えてくださると同時に、つくづくその勉強を僕にさせてくださるお仕事です。 毎回、緊張と失敗の連続です。最新号は竹本住大夫師匠。一言ひとことが、お客さんの前でやらせていただくプロとしての心得を説いていただいた気がいたしました。
「若い時に恥かかないかん」というのは、いろんな人によく言われます。恥かくためには、必死になって一生懸命やらないかん。ちょっと要領がわかったからと言って、そこでおさまってしまうとダメになる。いつでもこの言葉を聞くと何やらハッとします。
でも「聞く」だけではだめなわけで、これが僕の芸に「利く」ようにせんとあきません。
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